はじめに
投資を始めたいと考えた時に、まず初めに思い浮かぶのが『株式投資』かもしれません。
ただ、株式投資を始めようと考えたとしても、TVニュース等でよく聞こえてくる「日経平均株価」について、今一つ意味が分からない、とよくご相談の中で伺います。
一方で、誰かに「日経平均株価」について質問したくても、投資を始めようとしていることを知られたくないため、聞きづらいかもしれません。
そこで今回は「日経平均株価」がどのようなものであるか、その仕組みや歴史、活用方法まで詳細に解説します。
本記事を読み、「日経平均株価」についての理解を深めたうえで、有効に活用し株式投資を少しでも身近に感じていただければ幸いです。
日経平均株価とは?
日経平均株価とは、東京証券取引所に上場されている東証プライム市場上場銘柄の中から、225銘柄の株価をもとに算出される株価指数のことです。
以前は東証一部という名前で分類をされていましたが、日本の経済成長の鈍化や投資家心理の悪化などが原因で株式の取引量が減少していました。
そのため、日本の株式市場を国際競争力のある市場へと発展させる必要が生じました。
さらには以下のような背景もあり、2022年4月に東証プライム市場へ名前が変更されました。
- 国際競争力の強化
- 企業価値の向上
- 市場全体の活性化
東証一部の頃に比べて、プライム市場への参加条件の厳格化や、上場企業のガバナンス体制の強化などの改善を行い、今に至ります。
ちなみに、225銘柄は、東証プライム市場の銘柄の中から日本経済新聞社が独自の基準で採用しています。
日経平均株価は、広く利用されている日本の株式市場全体の動向を示すベンチマーク(※比較対象となる基準のこと)です。
具体的には、以下の式に基づいて算出します。
【 日経平均株価 = (各銘柄の終値 × 発行済株式数) ÷ 除数 】
言葉の意味としては以下の通りです。
- 各銘柄の終値:その日の取引が終了した時点の株価
- 発行済株式数:その銘柄が発行している株式数
- 除数:日経平均株価を算出するために用いられる調整係数
日経平均株価は毎営業日、東京証券取引所の閉鎖時間である午後3時頃に算出されています。
<ベンチマークとは何か?>
ベンチマークとは、運用成果の指標として用いる基準のことです。
株式投資におけるベンチマークについては、主に以下の2つの役割を持っています。
【役割1】パフォーマンスの評価: 自分のポートフォリオのパフォーマンスをベンチマークと比較し、投資成果を客観的に評価
【役割2】投資戦略の策定:ベンチマークを上回るパフォーマンスを目指すことで、より積極的な投資戦略を策定可能
投資信託においても、ベンチマークに連動した商品が数多く存在しています。
日経平均株価を採用した銘柄の一つに、ETF(上場投資信託)があります。
一例として、
- 上場インデックスファンド225(銘柄コード:1330)
- 上場インデックスファンド日経225(ミニ)(銘柄コード:1578)
また、ETF以外の投資信託として代表的な商品は以下などがあります。
- eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)
- 三菱UFJ国際投信 日経平均株価インデックスファンド
- ニッセイ日経225インデックスファンド
なお、投資信託は上記のように同じベンチマークに連動した銘柄でも、信託報酬や設定日(運用開始日)が異なるため、実績に差が出てきます。
<株式投資における日経平均株価以外のベンチマーク>
株式投資におけるベンチマークは、日経平均株価だけではありません。
他にも以下の表のようなものが存在しています。
ベンチマーク名 | 特徴 | 対象市場 | 採用銘柄数 |
TOPIX | 日本の株式市場全体の動向を示す | 東京証券取引所プライム市場 | 約2,200 |
S&P 500 | 米国株式市場全体の動向を示す | 米国ニューヨーク証券取引所とナスダック市場 | 500 |
MSCI ACWI | 世界の主要な株式市場全体の動向を示す | 世界の主要な株式市場 | 約3,000 |
日経平均株価も含めて、ベンチマークにはそれぞれ異なる特徴があります。
ちなみに、TOPIXと日経平均株価がよく混同されがちですが、TOPIXはプライム市場全体、日経平均株価はその中から一定の基準で選出された株式、とすると記憶に残りやすくなると思います。
投資を始める前に、それぞれのベンチマークの特徴を理解し、自分の投資目的に合ったベンチマークを選ぶことが重要です。
日経平均株価の仕組み
日経平均株価は、以下の要素によって構成されています。
- 採用銘柄
- 採用基準
- 組み替え時期
- 算出方法
次から各構成要素について、詳しく解説していきます。
<採用銘柄と採用基準>
採用銘柄は、東京証券取引所に上場されている全銘柄の中から、時価総額、出来高、流動性などを考慮して日本経済新聞社が選定しています。
採用基準は、以下の通りです。
- 時価総額: 1000億円以上
- 出来高: 1日平均100万株以上
- 市場で取引されやすい銘柄であること
代表的な企業だと、トヨタ、ソフトバンク、ファーストリテイリング(ユニクロ)などがあります。
<組み替え時期や算出方法>
組み替え時期は、2022年までは毎年10月に年1回行われてきましたが、2023年からは春秋の年2回の実施となっています。
また、万一採用した銘柄が上場廃止や倒産した際は、臨時で銘柄の選定を行います。
最近では、大手の電機メーカーである東芝が2023年12月20日に上場廃止しました。
これは、長引く経営の混乱から抜け出すため、新しい株主の下で経営再建を図るためと言われています。
上場廃止された株は、証券取引所で売買ができなくなります。
証券取引所で売買ができなくなると、該当の企業の株を発行している発行会社か信託銀行に問い合わせる必要があり、売買までにかなりの手間と労力を要しますので注意が必要です。
なお、上場廃止が発表されたら、原則としてその後1カ月間は「整理銘柄」に指定され、その間であれば株式市場で売却が可能です。
ただし、経営悪化などによるネガティブな理由で上場廃止になった場合、証券取引所で売却ができない、購入価格よりかなり安い金額での売却になる可能性が高いです。
株を購入する際は、上記のような上場廃止のリスクがあることを念頭に置いて取引するようにしましょう。
また、日経平均株価の算出方法は、ダウ式平均株価という方法を採用しています。
このダウ式平均株価とは、採用銘柄の株価を単純に平均して算出する方法です。
<日経平均株価の採用銘柄に入ると>
日経平均と連動するETF(上場投資信託)や投資信託は数多く存在しています。
そのため、日経平均構成銘柄に新規採用された銘柄は買いが入り、結果的に株価が値上がりするケースが多いです。
ちなみに最近(2023年10月)では、メルカリ、レーザーテック、ニトリホールディングスといった有名企業が日経平均の構成銘柄に採用されました。
なお、実際にニトリホールディングスは、採用銘柄に入った後、インフレの影響も含めて株価が大きく値上がりしました。
上記の表にあるように、インフレ(物価上昇)の影響もありますが、株価が大きく値上がりしていることが見て取れます。
もし、日経平均に入る企業が予想できれば、資産を伸ばせる可能性もあるでしょう。
日経平均株価の歴史
ここからは日経平均株価の歴史を見ていきましょう。
下記は、日経平均株価の推移を年毎に表したグラフです。
日経平均株価は、1949年5月16日に算出開始され、開始当時は225銘柄ではなく、150銘柄での構成でした。
日経平均株価は、1949年に開始から日本の経済成長とともに上昇、1989年には、バブル景気のピーク時に38,915円87銭という史上最高値を記録しました。
しかしながら、その後バブル崩壊が起こり、日経平均株価は大幅に下落。
そして、2008年には、リーマン・ショックの影響で7,054円98銭という史上最安値を記録しました。
一旦は最悪の状況に陥りましたが、近年はアベノミクスなどの政策効果もあり、日経平均株価は徐々に回復してきました。
2024年に入ってからはインフレや円安の影響があり日経平均株価が4万円を超え、今後もさらに値上がりしそうな勢いです。
日経平均株価の活用方法
ここでは、日経平均株価をどのように活用するか紹介します。
まず日経平均株価は、日本の株式市場全体の動向を知るために利用されています。
ですから、一般的に日経平均株価が上昇しているときは、株式市場全体が強気相場であると判断します。
また反対に、日経平均株価が下落しているときは、弱気相場と判断します。
ご自身で資産運用に取り組んでいる方は、日経平均株価と自分資産のポートフォリオの比較を行うことで、ポートフォリオの全体的なパフォーマンスを評価できることも、日経平均株価を見るポイントになります。
ただ、運用の目的や使う時期が短期(1~3年程度)であれば、日々の動きに注意が必要かもしれませんが、長期(10年以上)で投資をしている場合は、『あまり気にしない』ことをお勧めします。
<日経平均株価活用時の注意点>
このように日経平均株価は、日本の経済状況などを知るための指標として有効です。
しかしながら、活用時には以下のように捉えておくことも必要です。
- 日経平均株価は、日本経済の動向を知るための指標の一つとして利用する
- 日経平均株価は、個別株の投資判断の材料としてのみ利用する
- 日経平均株価は、長期的な視点で利用する
投資・資産運用に取り組む際は、日経平均株価だけを絶対的に信用せず、様々な視点から判断することが重要です。
最後に
本記事では、「日経平均」がどのようなものであるか、仕組みや歴史、活用方法について解説しました。
日経平均を知り、上手に活用することで、株式投資で資産を増やせる可能性があります。
しかしながら、この記事を読んでも、株式投資を始めとした資産運用をどのように進めたら良いか分からない、自分に合った銘柄の選び方などの疑問や不安もあるかもしれません。
そこで、株式投資を始めとした資産運用について詳しく説明されているセミナーを受けてみたり、専門家に相談してみたりするのはいかがでしょうか?