はじめに
資産運用や投資に興味があるものの、『金に投資する』とはどういうことか分からない人もいらっしゃると思います。
ご友人やお知り合いの投資に詳しい人から金投資が良いとオススメされても、仕組みや特徴がよく分からないので、二の足を踏んでしまう人も多いと感じます。
そこで今回は、そもそも『金投資がどのようなものであるか』について解説いたします。
さらに具体的に金投資の始め方やそれぞれの方法の特徴、また、金投資のメリットやデメリットを紹介いたします。
本記事を読み、少しでも金投資への興味が沸いて、ご自身の楽しい将来に向けて具体的なアクションに繋がれば幸いです
金投資とは
金投資とは、その名の通り現物の金に対して行う投資のことです。
産出量も限られている金は昔から世界中で価値のある商品であり「安全資産」と呼ばれています。
ちなみに、これまで人類史上、採掘された金の総量は約18万tだそうです。
この量が多いのか少ないのかイメージし辛いかもしれませんが、オリンピック公式競技用プールの約3.8杯分の量になるそうです。
そして、今後採掘できる地中の埋蔵量は、約5万tと考えられています。
現在は年間約3,000tのペースで採掘しているため、10数年後には枯渇してしまう見込みだそうです。
そうなると今後、さらに希少性が高まるかもしれませんね。
そんな金の歴史は古く、古代エジプト時代(紀元前3000年頃~紀元前30年)では、一般市民は金を持つことが許されていませんでした。
有名なツタンカーメンのマスクや棺には大量の金が使われていて、古代から権力の象徴として扱われてきました。
日本でも、現在の宮城県桶谷町付近において749年に金が確認されたのが始まりとされています。
マルコポーロの『東方見聞録』で、『黄金の国ジパング』(本人は来日していないとの説もあります)と記述があったように、日本にも金が多く産出され、人の目に触れていたと考えられます。
日本史上有名な出来事として、12世紀頃には奥州藤原氏が豊富な金の産出量を元に大きな権力を持っていました、と歴史の教科書で見た方もいらっしゃるでしょう。
さらに、佐渡金山(新潟県)では1600年頃から400年近くに渡って大量の金(約78t)を産出し、当時の江戸幕府や明治政府など当時の政府の経済を支えていました。
このように金は「安全資産」と言われるだけあって、歴史的に無価値になったことがありません。
以下の表を確認して分かるように、近年も年々価格が上昇しており最高値を更新し続けています。
上記の表を見ると2020年頃から急に上がってきていますが、この間にコロナ禍やウクライナの紛争などの影響があったためです。
金は政情が不安定になると、値上がりする傾向にあります。
上記を踏まえて、金の価格はどういった時に上がったり、下がったりするのか見ていきましょう。
金の価格は、以下のような時に上がる傾向があります。
- 金需要の増加(各国の中央銀行が金の購入に走るなど)
- 世界情勢の不安定など地政学リスクの影響(戦争など)
- 金利低下
- インフレ懸念の拡大
- 米ドル価値の低下
反対に、以下のような時に価格が下がる傾向があります。
- 金自体の需要減少や供給の増加
- 世界情勢の安定
- 金利上昇
- インフレ懸念の鎮静
- 米ドル価値の上昇
そのため、金はリスクヘッジのための商品ともいえ、現金や株などの一部を金に投資を行うことで資産全体の極端な値下がりを防ぐ役目を持っているのです。
ここまでで金の歴史や特徴を確認したので、次から実際に金の投資にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
金投資は実際にどうやって行うのか?
ここからは、金の投資には具体的にどのようなものがあるのか、また、それぞれどうやって投資を行うのか紹介していきます。
はじめに、金投資は主に以下のような投資方法があります。
- 金貨や金地金の現物購入
- 金に投資する投資信託
- 金ETF
- 純金積立
- 金の先物取引
それぞれの特徴やどのような場所で売買できるのか確認してみましょう。
<金貨や金地金の現物購入>
1番目に紹介するのは、金貨や金地金(きんじがね)の現物購入です。
これは、実際に貴金属店などで金貨や金のバー(インゴット:金塊)を購入する方法です。
販売している貴金属店や地金商で有名な企業は以下があります。
他にも百貨店などで購入できる場合もあり、実店舗への来店やオンライン上で購入が可能です。
売却は、上記店舗や金の買取業者に来店することで売却ができます。
現物で持つことのメリットとしては、即日換金ができる点です。
これは日本だけに限らず、世界中で価値が高いので換金が可能となっています。
ただしデメリットとしては、現物になるため、金貨や金のバーはどこかで保管しなければなりません。
しかしながら、自宅で保管すると盗難紛失のリスクがあり注意が必要です。
自宅での保管リスクを避けたい人は、銀行などの貸金庫に預ける手もありますが、一定の手数料が発生するので留意しておきましょう。
<金に投資する投資信託>
2番目に紹介するのは、金に投資する投資信託です。
メリットとしては、先ほどの現物投資と異なり、保管に対してのリスクが無くなる点です。
今年からリニューアルしたNISA口座を使って購入できるので、利益分を節税して投資を行うこともできます。
そんな金の投資信託商品で有名な商品では、以下のようなものがあります。
- 三菱UFJ 純金ファンド
- ピクテ・ゴールド
- iシェアーズ・ ゴールドファンド
上記投資信託は、証券会社に口座を開設すれば、売買ができるようになっています。
金に投資する投資信託のデメリットは、株や一般の投資信託同様に、価格変動のリスクです。
特に、下落することがあることが注意ポイントです。
<金ETF>
3番目に紹介するのは、金を扱っているETF(東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託)に投資する方法です。
メリットは、投資信託と同様で、保管のリスクがないことと、NISA口座で購入できるため利益に課税されない投資ができることです。
金のETF銘柄としては、以下があります。
- SPDRゴールド・シェア(ティッカーコード:1326)
- 金価格連動型上場投資信託(ティッカーコード:11328)
売買についても、投資信託と同様で証券会社に口座を開設すれば、売買が可能です。
売買は株式と同様で、購入金額や売却金額を指定して注文(指値注文)したり、値段を指定せずに注文(成行注文)したりします。
金のETFのデメリットも株や一般の投資信託同様に、価格変動のリスクになります。
<純金積立>
4番目に紹介するのは、田中貴金属や三菱マテリアルなどの会社から定期的に金を購入する方法で、純金積立と呼ばれる方法になります。
テレビのCMや雑誌などで目にしたことがあり、金投資の中で一番馴染みがある投資方法かもしれません。
田中貴金属や三菱マテリアルで口座を開設して、指定した一定金額分の金を購入します。
購入した金は、各会社で保管できるので、紛失や盗難のリスクはありません。
また、積立投資を行うことになるので、ドルコスト平均法により価格変動のリスクを軽減できるようになっています。
デメリットとしては、金価格自体の変動リスクが一つあります。
他にも口座の維持、実際に金を取り寄せる時に手数料がかかる点もデメリットと言えるでしょう。
<金の先物取引>
最後に紹介するのは、金の先物取引です。
これは、取引を行う際に、予め満期月(※限月)や価格を決めて取引を行う方法になります。
証拠金を使って実際の金額より大きな(レバレッジ取引)取引ができるため、場合によっては大きな利益をあげることが可能です。
しかしながら、その半面、金の価格が想定外だった場合、大きな損をする可能性があります。
金投資としては特殊なハイリスク・ハイリターンの方法であることを理解しておきましょう。
金の先物取引の売買は、主要な証券会社に口座を開設することで、取引が可能となっています。
金投資のメリットとデメリット
ここからは金投資におけるメリットとデメリットを解説していきます。
メリットとデメリットをそれぞれ3つずつ紹介しますので、投資を行う前に確認しておきましょう。
<メリット①:株式投資と組合せでリスク軽減できる>
1つ目のメリットは、株式投資と組み合わせることで、全体的な資産のリスク軽減が可能であることです。
金自体は、比較的価格が安定しており、値下がりがしにくい資産です。
現金とは違った安全性の高い資産であるため、株や投資信託の代わりに一部を金で持つことを考えても良いでしょう。
ただ、金投資自体は大きな利益を生むものではないので、資産全体の10%程度に留めておくのが一般的ですが、資産総額・収入などで考え方が変わる場合もあるので注意しましょう。
<メリット②:値下がりしにくく価格が安定している>
2つ目のメリットは、金の価格自体が安定している点です。
金自体は、これまでの歴史で無価値になったことがありません。
冒頭に示したように供給量も限られているにも関わらず、全世界で購入されていることから、価格が大幅に下がりにくく価格が比較的安定しています。
また、インフレ(物価上昇)に強いのも特徴で、現金で持つより安全性が高いという見方があります。
理由として、現金はインフレが起きると相対的に価値が下がりますが、金はインフレになると同様に値上がりする可能性が高く、結果として金自体の価値が下がる可能性が低いためです。
現金預金が多くある人は、一部資金を金に代えておくのもリスク分散の一つの手となるでしょう。
<メリット③:現物を持っていると全世界で換金がしやすい>
メリットの3つ目は、金が全世界で重宝されているため、世界中どこでも売って換金ができる点です。
基本的に金は売却すると即日換金できることが多く、現金になるまでに数日程度かかる株や投資信託と違い大きな強みになります。
現物で持つことができるので、いざという時の資産として持ち運びができることもメリットです。
仮に1g=10,000円だった場合、1kgで1,000万円相当となり、スーツケースに忍ばせておくことも…
ただ、金は重いのでたくさんは持てませんし、そもそもそんな大金持ち運ぶこと自体が怖いと感じるかもしれませんが…笑
<デメリット①:利息や配当収入がない>
デメリットの1つ目は、定期預金や株と違い利息や配当収入のように、保有しているだけで得られる収入がない点です。
金投資での利益は購入時と売却時の差分で得られるキャピタルゲイン(値上がり益)のみになります。
つまり買った時よりも上がらないと損失がでる、ということです。
定期的にお金がほしい人には向いていないので、株を持っている人は、資産の目減りを減らすという観点から一部の資金だけ、金投資にまわすと良いでしょう。
<デメリット②:投資の際に手数料がかかる>
デメリットの2つ目は、どのような投資方法であっても基本、何等かの手数料がかかる点です。
例として、現物で持っていて銀行の預けると貸金庫代、投資信託やETFだと証券会社によって売買手数料がかかります。
また、純金積立の場合、口座管理費用や金の送付手数料がかかりますし、先物取引でも諸所取引手数料が発生します。
金投資には、手数料がかかることは覚えておきましょう。
<デメリット③:現物で持っていると盗難・紛失リスクがある>
デメリット3つ目は、現物で金を持っている場合は、自宅に保管することになるので、盗難や紛失のリスクがある点です。
こればかりは避けることができないので、不安な人は銀行の貸金庫に預けておくのが良いでしょう。
ただし、銀行の貸金庫も手数料がかかることに注意が必要です。
どちらも嫌だと感じる方は、純金積立や投資信託、ETFでの投資を検討が良いかもしれません。
最後に
本記事では、金投資の特徴や方法、ならびに、金投資におけるメリットやデメリットについて解説しました。
金投資は守りの資産というだけあって、株式投資などの他の商品と組合せて運用を行えば、より安全に資産運用ができる可能性があります。
しかしながら、具体的にどのくらいの資産や資金を金や株などに投資したら良いか分からない人もいることでしょう。
そもそもご自身にとって、『どんな目的も持っているのか』、『思い通りの人生とは』、『自分に合った方法や制度は』をしっかりと考えましょう。
また資産運用は、始め後に定期的な確認やメンテナンスが必要です。
そこで、少しでも迷わず自信を持って投資ができるように、資産運用や投資について詳しく解説しているセミナーを聞いたり、専門家に相談することをお勧めします。